お正月明けの雪の降る日に、あたしは初めてこの家にやってきたんだ

あたしの名前はミニ―。13歳の女の子・・っていうか、もうおばあちゃんになっちゃった。ロシアンブルーっていう種類なの。
あたしがこの家に初めてやってきたのは13年前の雪の降る日だったんだ。お正月はペットショップで過ごしてたんだけど、お正月が明けて初めての営業日に、今のご主人様がペットショップにやってきて、ケージで遊んでいたあたしの顔をまじまじと見つめて【うちに来るか?】って聞いてくれたの。その時の事はあんまりよく覚えていないんだけど、今でもご主人様は【あの時、確かにお前はコクンって肯いたんだよ】って言ってる。ほんとかなあ。
そうしてあたしはペットショップを離れて、初めてご主人様の家にやってきた。雪が降ってる日だったんだよ。寒かったあ。
家に着いたら、もう一人のネコがやってきてあたしに挨拶をした。それがアンお姉ちゃん。もうこの家に3年住んでるんだって。アメリカンショートヘヤーのお姉ちゃんはあたしの先輩だ。
それからお姉ちゃんとあたしはすぐに仲良くなった。家の中の事、いろいろと教えてもらったよ。おしっこのやり方や、水の置き場所なんかをね。そうやって時には喧嘩したりじゃれ合ったりしながら、ずっと暮らしてきたんだ。
そうして13年経った今、お姉ちゃんもあたしもすっかり年をとっておばあちゃんになっちゃった。今は二人して陽の当たる窓際に並んで寝っころがって、うつらうつらしている事が多くなってきた。そんな時、初めてこの家に来た雪の日の事を思い出したりするんだ。そうしてあたしはこう思う。
【この家に来る事が出来て本当によかったなあ】って。そんな幸せを感じながら、あたしは今日もこの家で暮らしている。